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弘斗が電話に出ると、電話の相手は黙り込んでしまった。
「あの、もしもし?」
再度声をかけると慌てたような男の声が返ってきた。
『えっ、あ、すいません。…あの、それ唯人の携帯ですよね?』
どうやら別の誰かにかけ間違えたと思ったらしい。
…それとも、本人が出ない事に警戒しているのか?
「はい。唯人君の携帯で間違いありません。訳あって友人の僕が電話に出させていただきました。」
こういう時の対処は、やはり弘斗が1番だ。
実際はどうであれ、丁寧な話し方で相手に不信感を与える事は少ないし、冷静な対応で事が早く進む。
『じゃあ唯人は今電話に出られないんですか。』
「はい。失礼ですが、唯人くんのご友人ですか?」
『そうです。…唯人、どうしたんですか。無事ですよね。』
「体に問題はありませんが、今眠ってしまっていて…」
『うわぁ、やっぱり!すみません!』
「え、はい?」
急に耳元で大声を出されたので顔をしかめる弘斗。
それに。
…なぜコイツが謝るんだ?
僅かに胸を曇らせた疑問を隅に追いやり、まずは最優先事項を。
「あの、唯人くんの自宅をご存じだったりしませんか?」
『俺、今唯人の高校の前に居るんで案内します。』
「そうなんですか、助かりました。直ぐに向かいます。」
そう言って電話を切った。
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