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ふぅっと息をついて、携帯を再び千紘に渡す。
「電話の相手の人、何て言ってたの?」
「ちょうど校門まで唯人君を迎えに来ていたので、道案内して下さるそうです。」
「マジでか。すげー偶然!」
「じゃあ急ぐぞ。」
急ぎ足で校門へ向かうと、他校の制服に身を包んだ男が1人立っていた。
茶色い短髪で爽やかなスポーツマンのような雰囲気の彼は、地元一の不良達相手に臆した様子もなく、正面に堂々と向き合って口を開いた。
「こんばんは。さっき電話をした、『守山剣吾(モリヤマ ケンゴ)』です。」
そう自己紹介をして軽く頭を下げた彼は、唯人の古くからの友人だという。
洸の元へ駆け寄って、腕に抱えられた唯人の顔を覗きこむ。
「…よし。」
「?」
彼が何に納得したのか分からず、洸は顔をしかめたと同時に驚いた。
彼が唯人から顔を上げて、真っすぐに洸を見たのだ。
「…何だよ。」
無言のまましばらく洸の顔の見た後、「何でもありません。」と笑って一歩下がった。
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