君との距離

2/20
前へ
/411ページ
次へ
■洸 side 唯人を布団に寝かせるため、守山と俺は2階。残りは1階のリビングへ通された。 「ま、待って!リビングって家族の人がいるんじゃ―…」 「父さんはまだ仕事で、母さんは買い物に行った。気兼ねしないで自由にくつろいでて下さい。」 そう言うとみんなの肩の力が少し抜けた。 階段を上って直ぐの部屋の扉を開け、待ってくれている守山に軽く礼を述べて中に入る。 部屋の奥に置かれたベッドの上に唯人をそっと降ろし、起きていないか2人で唯人の顔を覗きこんだ。 「…寝てますね。」 「…だな。」 ふーっ、と力が抜けたように、揃ってベッドの傍に座り込んだ。 「お疲れさまでした、先輩。」 「ああ。」 守山は立ち上がって唯人の制服のネクタイとボタンを外し、そっと布団をかぶせた。 その手つきは慣れたもので、ずいぶんと手際が良い。 「お前、唯人の母親みてーだな。」 何気なく言ったその一言に、守山の動きが一瞬止まった。 「本当に…いっそ家族だったら良かったんですけどねー。」 そう言って優しく唯人の頬に触れた。 「…また少し痩せたかな。」 守山が唯人を見つめる瞳は、家族でも友達のそれでもない。 果てしない愛しさが込められていて、それでいてどこか切なげだ。 その事に守山本人は気付いているのだろうか…
/411ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2659人が本棚に入れています
本棚に追加