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■洸 side
唯人を布団に寝かせるため、守山と俺は2階。残りは1階のリビングへ通された。
「ま、待って!リビングって家族の人がいるんじゃ―…」
「父さんはまだ仕事で、母さんは買い物に行った。気兼ねしないで自由にくつろいでて下さい。」
そう言うとみんなの肩の力が少し抜けた。
階段を上って直ぐの部屋の扉を開け、待ってくれている守山に軽く礼を述べて中に入る。
部屋の奥に置かれたベッドの上に唯人をそっと降ろし、起きていないか2人で唯人の顔を覗きこんだ。
「…寝てますね。」
「…だな。」
ふーっ、と力が抜けたように、揃ってベッドの傍に座り込んだ。
「お疲れさまでした、先輩。」
「ああ。」
守山は立ち上がって唯人の制服のネクタイとボタンを外し、そっと布団をかぶせた。
その手つきは慣れたもので、ずいぶんと手際が良い。
「お前、唯人の母親みてーだな。」
何気なく言ったその一言に、守山の動きが一瞬止まった。
「本当に…いっそ家族だったら良かったんですけどねー。」
そう言って優しく唯人の頬に触れた。
「…また少し痩せたかな。」
守山が唯人を見つめる瞳は、家族でも友達のそれでもない。
果てしない愛しさが込められていて、それでいてどこか切なげだ。
その事に守山本人は気付いているのだろうか…
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