君との距離

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「まさか湊、それで唯人とケンカしとったんか?」 新の質問に、湊は俯いて答えた。 「…危なかったのに、何で助けを呼ぼうとしないんだって聞いた。そしたら泣いちゃって…」 「泣いた原因も何も聞けてへんまま、か。」 コクン、と目を伏せたまま頷く湊。…こんなに落ち込んだり弱っている湊は珍しい。 「しゃーないなぁ。おいで、湊。」 「…」 床に座る新の横に黙って腰を下ろし、頭をコテンと新の肩に預ける。 新はその頭にそっと手を置いて髪を撫でた。 「ははっ、今日はえらい素直やん。唯人の奴、湊に何言うたんや?」 湊は今日の放課後の事をみんなに話した。 仲間で、好きで一緒にいるんだから…どんな事でも頼られれば嬉しい。 力になりたいし、逆に助けたりもして欲しい。 絶対に迷惑だなんて思わないのに… 話し終わった湊は新の脚の上に倒れ込んだ。 「これは重傷やなー」と言いながらも、新は膝枕されている湊の髪を、再び嬉しそうに触り始めた。
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