君との距離

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逃げられないと思ったのだろうか。 すっかり抵抗をやめ、今度はぐったりと崩れ落ちて項垂れる唯人。 抱き締めている力を少しだけ緩めるが、俺に体を預けたまま逃げようとはしなかった。 さっきとは打って変わって大人しくなった唯人。 「唯人?」 昔のように柔らかな髪を撫でながら優しく呼びかければ、「―け、…ご」と今にも消えそうな声で名を呼び返された。 「うん、俺だよ。」 「…剣吾…」 「うん…落ち着いた?」 コクン 小さく頷いた唯人。 思わず頬が緩んだ。 「わっ、」 唯人を姫抱きにして階段を上る。 持ち上げた唯人はやっぱり、以前よりも少しだけ軽くなっていた。
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