君との距離

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思いのほか回想が長くなったが、つまり何が言いたいのかというと、桃花が今泣いているのは俺のせいってことだ。 「桃花、泣かないで?」 「うっ…泣いてない…」 「うん。でも今にも泣きそうだ。」 桃花の頭をよしよし、って撫でると嬉しそうに顔を綻ばせた。 うん、可愛い。 「桃花は笑った方が可愛いよ。」 「うえっ!?急になにを/////」 「泣いたら目が腫れちゃうだろ?せっかく可愛いのに…もったいないよ。」 そう言って微笑んだら桃花の顔が真っ赤になった。 恥ずかしそうに俯いて「男前受け…」とか良く分からない言葉をブツブツ呟いている。 「?」 良く分かんないけど褒められてる、のかな? 首を傾げながらもベッドから抜け出して、ドアへ向かおうとすると、 「唯人くんっ!」 桃花に腕を掴んで止められた。 「どこ行くの、唯人くん。」 「起きたんだから帰るよ。」 「ダメ、お兄ちゃんに会って。」 「………」 桃花の言葉に全身の動きがピタリと止まりかけた。 何とか笑顔を作って「ごめんね、ありがとう。」と言えば、桃花が表情を歪ませて息を呑むのが分かった。 あぁ、上手く笑えなかったかな。 桃花の力が緩んだ隙に手を離させて、もう一度軽く頭を撫でてから部屋を飛び出した。
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