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「なぁ剣吾…いっこだけ聞いてもいい?」
「ん、何…」
くぐもった震える声に、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
苦しい。痛い。
でも、それでいい。
こんなのじゃ全然足りないけど。
少しでも剣吾の苦しみが知りたいから。
だから、聞かなきゃ。
「いつから、俺の事好きだった?」
「っ、」
「剣吾を責めたいんじゃない。もちろん興味本位や自惚れでもない。…知らなきゃダメなんだよ。」
質問の意図が分からなくて少し困惑した様子を見せながらも、ゆっくりと思い出すようにして口を開いた。
「ハッキリといつから好きだったかは、正直よく分からない。
気付いたらもう、どうしようもないくらい大好きだったよ。唯人がいないと、何をしても楽しくなくて…
でも、中学の頃はもう恋愛感情で好きだった。
初めて会った時の唯人は、小さくて気弱で泣き虫で、誰よりも優しくて…いつも一人で寂しそうだった。
だから幼心に『俺が側にいて守らなきゃ。』って思った。
でも、大きくなるにつれて『側にいたい』『離れたくない』『強くなって守りたい』って思うようになったよ。」
まだ濡れた声だったけど、穏やかで、愛おしさがたくさん含まれた声色が、俺の胸に静かに沁みていった。
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