秘密

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誰に言ったでもないような呟き。 その声から感情を読み取る事ができなくて、ただ事実を口にした、といった感じだった。 「……」 俺が言葉を返せずにいると、天井を見つめたままポツリポツリと言葉を零れさせた。 「分かってたよ。唯人が俺の事を心から大切に思ってくれてる事。 でも、その気持ちは俺と同じモノじゃないんだって事も。」 うん、そうだな。 俺とお前の『好き』は違う。 響きは同じでも、種類の異なる、別のモノ。 でもさ、『好き』の重さは一緒じゃないかな。 剣吾が俺の事を想ってくれているくらい、俺もお前が『好き』なんだから。 そんな事を言えば、お前は絶対に「俺の方が何倍も好きだよ」とか恥ずかしい事をサラリと言いやがるから、絶対言わない。 でも、もしそう言われたら俺は、 「俺だって何倍も何倍も何倍も、負けないくらい剣吾が好きで大切だよ。」って、きっと返すんだろうな―と思う。
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