秘密

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剣吾肩に顔を埋めたまま、きゅっと服を掴む。すると掴んだ俺の手を、剣吾の大きくて暖かい手が優しく包んだ。 「心配しなくても大丈夫。今までだってそうだったし。」 「それは、そうだけど…それにさっき、俺を泣かせたくないから、その…色々ガマンするって…」 「あぁ、それは大変かな。唯人は無自覚に誘ってくるから。」 「じゃあ…」 「でも! だからって唯人と離れる理由にはならない。それに、俺の我慢強さは唯人が一番よく知ってるでしょ?」 「うん、それは知ってる。」 今日の剣吾からは想像できないかもだけど、本来の剣吾は本当に芯が強くて誠実で、自分がやると決めた事は絶対に曲げないような人だ。 中学2年の時、左手首を骨折しながらも、片手で剣道の全国大会で優勝した時は本当に驚いた。 「俺にとって、唯人と離れる事が何よりも辛くて、怖い事なんだよ。わかった?」 まるで子供に言い聞かせるような優しい声に、不覚にも安心して首を縦に振ってしまった。 くそう… 付き合いが長いだけに、無駄に俺の扱いがうまい。 「あ、でも今まで程度のスキンシップなら許して? ガマンばっかじゃ体に悪いし、何かの拍子に理性外れて爆発しても怖いしね。」 う、それは…本当に怖そうなので二つ返事で許可した。俺だって剣吾とこうやってぎゅーってできないの嫌だし。
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