君の知らない過去

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「あのゲームさ―…」 「今日帰ったら対戦しよーぜ!」 「そのデッキって―…」 盛り上がる集団の中に入ってはいるが、一言も口を挟まずに大人しく友人らの話を聞いている唯人。 他の友人らは唯人を、ただ「無口で大人しい奴」と認識していたが、剣吾は唯人の表情や雰囲気に違和感を感じて声をかけた。 「なぁ、お前具合悪いの?」 唯人の隣に移動してそう問えば、唯人は大げさな程に体をビクつかせて剣吾を見た。 「えっと…僕?」 この頃の唯人の一人称は〝僕″で、口調も今より弱々しいものだった。 「そう。ずっと黙ってるし、しんどいの?」 そう言って剣吾が顔を覗き込むと、唯人は一瞬戸惑った後、ふにゃりと笑った。 「大丈夫、だよ。」 「そう?ならいいけど。」 「うん…ありがとう。」 「おう。」 「………」 「………」 「……」 「……」 「…」 「…」 会話が終了した。
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