君の知らない過去

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剣吾に抱きしめられたまま、どうしていいか分からずに固まる。 ぎゅってされるのは、あったかい。 落ち着く。安心する。嬉しい。 だから離れたくはないんだけど、人とこんなにくっついた事もないから戸惑ってしまう。 為すがままになりながら、「あ、お尻冷えてきたな」とか思っていたら、不意に耳元で微かに笑う声がした。 「剣吾?」 「はは。あのね、唯人。」 「?」 「唯人は、ぎゅってされるの嫌じゃない?」 「うん。」 ふわふわして好き。 胸の中がポカポカする。 そう言ってコクコク頷けば、またふわりと優しく笑う。 あ。 この優しい笑顔も、好きだ。 「こういう時は、唯人もぎゅってするんだよ。」 「僕も?」 しばらく剣吾の様子を窺って、恐る恐る剣吾のマネをしてみる。 剣吾の背中に腕を回す。 でもまだ戸惑いや遠慮が消えなくて、剣吾の背中に掌が触れるか触れないかって場所で手が止まった。 うっ…ちょっと腕筋がツラい。
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