君の知らない過去

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ぎゅ――――っ!!! 本当に、ちょっと痛くて苦しい。 これでもかってくらい密着して、剣吾の体温と心音が伝わってくる。 誰かとこんなにくっついたのは初めてで、胸の奥がムズムズする。 でも、たしかに幸せ…かもしれない。 力強い腕から剣吾の優しい気持ちがどんどん流れ込んでくるような、そんな感覚。 こんなの初めてで、正直戸惑う。 でも、嫌じゃない。 嬉しい、幸せ。 「剣吾も、幸せ?」 俺も全力…はまだ無理だったけど、あの時ある勇気全部を振り絞って、できる限りの力で抱きしめ返してそう問うた。 すると剣吾が一瞬驚いた顔をした後、 「うん。すーっごく幸せ。 ありがとう、唯人。」 そう言って俺の大好きなあの優しい笑顔を返してくれた。 その後―… いつまでも教室に帰って来ない俺達を探していた教師に見つかって、二人で叱られながらこっそり笑い合った。
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