君の知らない過去

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放課後は剣吾と手を繋いで、他愛もない話をしながら帰る。 今日の給食がおいしかったこと。 休み時間にクラスの男子がふざけてたこと。 授業中に当てられて焦ったこと。 飼育小屋のうさぎのこと。 居眠りを注意されても気付かなかったこと。 剣吾との会話は学校の話がほとんどで、俺が知らない、嫌だなって思う話は絶対にしなかった。 そんな優しく聡い剣吾は、同学年のはずなのにとても逞しくて眩しくて。 いつも温かい手で俺の手を引いてくれた。 その大きな背中は大好きだけれど、いつしか隣に立ちたいな…なんて生意気なことを密かに思ったりして… まるで別れを惜しんでいるかのように、ゆっくりとした足取りで進む剣吾の隣を、俺も同じ歩幅で歩いた。
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