君の知らない過去

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よく大人たちは「可哀想にね。」「一人で大丈夫?」と俺に声をかけた。 俺はそれに笑って「ありがとうございます。」「大丈夫です。」って答えてたけど、剣吾はその度に複雑そうに顔を歪めた。 怒っているような、悲しんでいるような、心配そうな、そんな顔。 どうしたのかと尋ねても、「何でもないよ。」としか返ってこない。 最初は首を傾げるしかなかった俺。 でも歳を重ねる毎に、少しずつ理解していった。 大人が俺にかける心配の言葉の裏には、俺の両親に対する皮肉なんかが含まれている。 そして、 「本当に親がいなくて大丈夫なのか」 「きちんとした人間に育つのか」 「我が子と関わらせて大丈夫なのか」 「大人しい者ほど、何をするか分からない」……… なんていう、俺に対する不信感も。
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