君の知らない過去

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剣吾を含め、そんな俺の『日常』の片鱗を見た者は、決まって眉間にしわを寄せた。 それは遠い海外で働く俺の両親や、事務的な態度の杉下さんへの怒りであったり、俺に対する同情、心配であったりと様々な意味で。 でも、どうしてそこまで憤り、嫌悪感を抱かれるのかが分からない。 俺のため? でも俺はそんなの望んでないよ。 確かに愛情を実感した事はない。 杉下さんが俺の側に居るのも、あくまで仕事だから。 他愛のない会話だって、あまりしない。 けれど、 邪険に扱われたこともない。 彼女は俺に「おはよう」と「おかえり」と「おやすみ」をくれた。 それだけで、俺は十分なんだよ。
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