君の知らない過去

49/51
前へ
/411ページ
次へ
剣吾よりも、グリグリとやや荒っぽい撫で方。 髪が顔の前で舞ってくすぐったい。 そんな俺を見つめる彼女の目は優しく細められていて、目元が剣吾とそっくりだった。 やっぱ親子なんだなー、なんて思う。 何かある度に俺の頭を撫でる癖も一緒だ。 「よし、作業再開!」 「はい!」 未だ頭に残る温かな感触を感じながら、再び手を動かした。 なぜ俺が綾香さんの手伝いをしているのかと言うと、「成り行き」その一言に尽きる。 ある日、道場で剣吾の稽古を見学していると、差し入れを持って現れた綾香さん。 以前からお世話になっていたので挨拶すると、「何もせずに見てるなんて暇じゃない?」と言って、ズルズルと剣吾の自宅へ連行された。 そして明日差し入れるのだという『レモンのはちみつ漬け』作りを手伝い、流れに流れて家事全般を手伝うという現在の状況に至る。
/411ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2658人が本棚に入れています
本棚に追加