期待と現実

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全員の自己紹介が終わって、俺に順番が回って来た。 「姫川唯人(ヒメカワ ユイト)、1年です。よろしくお願いします。」 座ったままペコッと頭を下げる。 顔を上げると、出城洸と目が合った。 「俺たちに敬語はいらない。名前も呼び捨てで良い。」 「「「「え、」」」」 出城洸の言葉に、目の前の奴らの声がハモった。 「洸ってば、認めた相手にしか名前を呼ばせないのにぃ…」 「唯人君を仲間と認めるって事ですか?」 「ああ。文句あるか?」 部屋の空気が一気に変わる。 ひょっとして、俺って歓迎されてない? 不安を抱えていると、ポンポンっと先生に頭を撫でられた。 上を向くと、笑顔の先生。 大丈夫って事らしい。 「俺は嬉しいぜ!でもいいのか?俺らの仲間になれば、敵に狙われるかもしんねーぞ?」 「そうだよ。僕からも逃げられなかったのに…」 「唯人、危ない。」 どうやら俺の事を心配してくれているらしい。 でも、敵に狙われているお前らって一体…あぁ、不良か。 少しの沈黙の後、洸が小さく笑った。 「俺らが守ればいい話じゃねーか。トップ張ってんだろ?そんくらい余裕だ。」 力強い、自信に満ちた声。 みんなが少し呆れたような笑みを漏らした。 「まったく、簡単に言ってくれますね。」 「姫ちゃんは僕が守る♪」 「はは。なんか面白くなってきたじゃん。」 「安心しろ、唯人。」 全員の笑顔が俺に向けられる。 俺を仲間として認めてくれたのかな。 みんなの気持ちが嬉しくて、俺も心から笑っていた。 今は頭に置かれた先生の手も心地良く感じる。 ―…こうして俺とオオカミたちの騒がしい日常が始まった。
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