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難しい顔をして考え込んでしまった先生の答えを、静かにじっと待つ。
「そう、父親と話す子供のような感じなんだ。」
閃いたようにパッと顔を上げ、うんうんと頷いている。
「は…父親、ですか?」
姫が竹中先生を父親に見立てている―…と?
「うむ。上手くは言えんが…家で寂しい思いでもしているんじゃないかと心配でな。」
「…」
もしかすると、その事と姫が毎日眠そうなのは関連している?
「まぁ私の歳から考えて、父親よりも祖父に近いかも知れんが。」
はっはっは、と愉快そうに笑う竹中先生。
うーん、こういう時の返答はどうすればいいのか…
昔散々やんちゃして、ろくに大人と関わってこなかった自分には、少し難しい。
「すまんの、私のただの勘だ。聞いてくれてありがとうございます。」
丁寧に礼を言われ、慌ててしまう。
「いえそんな!こちらこそ貴重なお話、感謝します。私からも注意して見ておきます。」
竹中先生は柔らかく笑って軽くお辞儀をし、またもと来た道を戻って行った。
「…立派な人だ。」
俺では姫の表情の奥にあるものなど気付かなかった。
ガキだった頃の俺から、ちっとも成長できていない気がするよ…
取り合えず、このバカな不良達にビビらず接する事が出来るのは俺だけだ。
俺は俺のやり方で向き合うしかない。
ガラッ
「よっ、お前ら!掃除進んでるか?」
「あっ!先生いい所に!」
「こっち手伝って下さい。」
それから部屋が片付くまでの1週間、俺はコイツらのために走り回る事になった。
■直哉side END
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