三章《settle down》

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そして双… 「だああ!!」 よく解らなすぎて苛つく。 「だから落ち着けって!!」 「こんな状況で落ち着いてなんていられるか!!」 また言われた。さっきは巽で、今回は翔亜だ。 ここに来てから、何度も誰かに落ち着けと言われている。 翔亜に一番言われていて、次に巽、優。柊斗にも一度言われた。 だが、双にだけは一度も言われたことがない。どころか、玲二が何をしようが見向きもしない。 今もそこに転がっていた木の箱を双の横の壁目がけて蹴っ飛ばし、双の真横で粉砕させたのだが、 驚いた様子もない。大抵は反射的にそちらを見ると思うのだが、それもない。 自分は落ち着いているから、こっちのことなどどうでもいいのだろうか。 いや、自分の記憶の限りでは、そんな奴じゃなかった気がする。いつも周りを気にする奴だった。 小学校で同じクラスだったとき、算数のワークを手伝ってくれた覚えがある。 テストの時も、答えをダイレクトには教えてくれなかったが、こっそり解法を教えてくれた。 そう、最初のステージで双がやったことも、自分達のことを思っての行動だった。 だから、今、双が自分に対して何の反応も示さないことがかなり苛つく。 「夜宮遅いな…呼びに行くか?」 「あ、じゃあ私行くよ」 いつまでも来ない柊斗を気にして、翔亜が立ち上がろうとしたを手で制して双が立ち上がる。 俺に対しては何もないのに、夜宮の為なら動くのかよ。 一瞬で怒りが沸き起こった。俺ってそんなにどうでもいい人間? 「ちょっと来い」 「え…」 双の腕を掴んで部屋を出る。その腕の細さに一瞬怯んだが、構わず腕を引く。 あくびをしながら柊斗が出てくるのに遭遇した。 「ふぁ…あれ?どうかしたのか?」 「別に」 わざと素っ気なく答えて通り過ぎる。柊斗は首を傾げながらも大部屋に入っていった。 玲二は双と自分の部屋に入ると、バンッと部屋のドアを蹴り閉めた。
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