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ーー狭い路地裏
昼間でも人通りは全くないこの道は夕日が指すことなく、夕方でありながら既に街灯だけが頼りの暗さだった
その街灯の下、唯一明るい場所に曽根が足を踏み入れた
徐々に灯りに照らされた曽根の顔があらわになる
笑っていた
勝ちを確信した笑みだった
「いやーかないませんわ。こんな中年小太りのオッサン相手に、若いあんさん数人で寄って鷹って。親父狩りとちゃいますの?」
隠れている飯田たちは反応しない
「それにしてももう随分暗くなりましたな。こう暗いとオッサンなにも見えませんわ。やっぱり灯りが欲しいでんな」
その言葉が言い終わった頃、物陰に隠れていた俺達の足元に空き缶のようなものが転がってきた
(フラッシュグレネード!)
間髪いれずに激しい閃光と爆発音が炸裂する
だがしかし、フラッシュグレネードの存在を知っていた俺は
対閃光用の特殊加工がなされたスーツの袖で目を隠した
爆発音も耳栓で対策済みだ
光が収まった頃、曽根が手に持っていたニューナンブM60を撃ってきた
俺は路地の影に隠れて声をあげた
「そのニューナンブM60は警官から奪ったのか?」
ニューナンブM60は日本の警察や海上保安庁で正式採用されている拳銃だ
もちろん一般に販売などされていない
「天下り品やで、天下り品」
そういいながらさっきのフラッシュグレネードで鼓膜や視力を奪われた飯田の部下に止めを刺して回っている
俺の脇に駆け寄ってきた飯田が耳打ちしてくる
「野郎の注意を引いてくれ」
頷くと飯田は別の場所へ身を隠した
指示通りに物陰から身を乗り出すと曽根が間髪いれずにM60で2発撃ってきた
今回の依頼は殺傷ではなく護衛
わざわざ撃たれることもないが殺す必要もない
愛銃M93Rを構え、応戦する
殺す必要はない
ただ、飛んでくる弾を相殺してやればいい
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