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「それで、ここらの大元締めの紫村組の方が今回はどういう依頼ですか?」
改めて仕事の内容を聞く
「『元』紫村組言ーてますやん、死神ハン」
「死神ハン」という呼び名は気に入らないが、そこには触れないでおく
「今、わいは紫村組の連中に追われてますんで、どこか他の組に匿ってもらいたいんですわ」
曽根のポッチャリというには少し丸々しすぎる肢体をくまなく観察しながら、事務所にひとつしかない安物のデスクに寄り掛かる
――おかしい
普通、不確定要素の多い『他の組に匿ってもらう』という選択肢を選ぶだろうか?
曽根がここに雪崩込んできたのは俺の噂を聞いたからだろう
なら確実に『俺に匿ってもらう』という選択肢を選ぶはずだ
その上、これだけ時間が経っても紫村組の追っ手が来ないなんて不自然だ
この豚然とした曽根が追っ手から簡単に逃げられるとは思えないし、例え追っ手を始末したとしても第二、第三の追っ手が来るだろう
結論、曽根は何かを隠している。又、紫村組は本気で曽根を追っていないもしくはそもそも追っていない。
そうなると事情を聞く必要があるな
状況を知らされずにあとから面倒に巻き込まれるのも御免だしな
猫舌なのかアチチとか言いながらコーヒーを飲みはじめた曽根に声をかける
「正直に言ってください。何を隠してるんですか?」
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