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中に入るなり左側の、入口から死角になる位置にいた男が拳銃を突き付けようとしてきた
だが、遅い。相手が間合いに入ってから構えるなんて論外だ
しゃがんで体制を低くし一時的に相手の視界から消え、一気に間合いを詰めて下から拳銃を持っている手を掴み関節とは反対方向に手首を捻る
瞬間的な痛みに相手が拳銃を手放した後、そのまま手首を捻りあげるとそのまま相手がひっくり返る
合気道の応用だ
「客人にチャカを向けるとはな。赤羽組も随分と礼節を欠いたものだな。俺がこの前“遊びに”来た時はもうちょっとマシだったのに」
ソファーに踏ん反り返って葉巻を吸ってる男に言い放つ
「ご冗談を。“殲滅”の間違いでしょう?お蔭様で天下の赤羽組もガタガタですので、下の者もピリピリしてるんですよ」
インターホンの時とは打って変わって敬語で話す男――確か、赤羽組の幹部候補の飯田だ――がニタニタしながら返してきた
拳銃を向けようとした男から手を離し、飯田の向かいのソファーに腰を下ろす
「飯田さんだったか?あの時は自分も公務員でして、上からの命令は絶対だったんですよ。でも命令は無力化しろだったんで潰そうとしたわけではないんですよ?だから遊び程度ですよ」
「思い出話はこれくらいにして。本日はどのようなご用件で?早くしないと下の者が仕掛けそうなのでね」
確かに、周りの下っ端共がガン飛ばして臨戦体制でいるな。向こうからしたら敵がわざわざ懐に入ってきたようなものだ
「では手短に。この中年――曽根さんを仲間に迎えてやってくれ」
「経歴不詳、動けなそうな豚体型の中年を面倒見ろと?冗談ですか?」
割りと筋肉質な飯田のこめかみが一瞬震えた
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