③最期のあいさつ

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(え…?何?) そこには3年程住んでいましたが、そんな事は今まで一度もありません。 不思議に思っていると、娘がニコニコと笑いながら、 「バイバーイ」 と言って、そちらに向かって手を振ったのです。 普段、あまりバイバイをする子ではなかったし、誰も居ない空間に向かって突然そんな事をするものだから不思議には思いましたが、その時は怖いとは思いませんでした。 しかし、その直後。 家の電話が鳴り、取るとそれは実家の母からで。 「たった今、おじいちゃんが息を引き取ったよ」 との事でした。 小さい頃から孫の私をとても可愛がってくれて、私の娘の誕生も、それはもう喜んでくれていた祖父。 とても昔かたぎで厳格で、自分の子供さえ抱っこする事のなかった様な祖父だったらしいのですが、私の娘の事は会う度にニコニコしながら抱っこしてくれた祖父。 恐らく、遠く離れた私達をいつも心配してくれていたので、最期のあいさつに来てくれたのでしょう……。
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