Ⅲ.rebellion《叛逆》

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【同時刻 藤沢邸】 マリンサファイア号での井上の目論見が、麻理亜により打ち砕かれた頃。 回りを鬱蒼とした木々に囲まれ。 目算で1000坪程はあろうかという広大な敷地を高い屏で覆い。 生い茂る木々の間に監視カメラを忍ばせ。 まるで外界との接触を拒絶するかの様な中に。 白を基調とした瀟洒な西洋式の邸宅が建っていた。 手入れの行き届いた庭の中に立つ邸宅は、うら寂しい回りの風景と相反する要素が際立ち、ある種の異質さを漂わせている。 この邸宅の持ち主は藤沢正太という名で、今は邸内の客間で来客者と向かい合っていた。 「これ以上突き進むというのなら・・・ 私としても放っておく訳にもいかなくなる」 苦渋の表情を浮かべ藤沢が来客者へ告げるものの、来客者は冷笑を浮かべるのみである。 「今さら?」 ピンクの薔薇が描かれたマイセンのコーヒーカップに口を付け、涼しい顔でコーヒーを啜る来客者はナナだった。 「それが私の責任でもある。 君というモンスターを産み出してしまった私のな・・・」 ナナを見つめる藤沢の瞳は、悲しげな色を帯びている。 学者風の知的な顔に憂いを漂わせてはいるが、それだけでは無い事をナナは知っている。 「アタシがモンスター? 随分な言い方だけど、それもまた今さらよ。 アタシがやろうとしてる事は、アンタには関係無い事なのに。 それでも、ここにアタシを呼んだ理由はそれだけ?」 ナナは嘲笑う様な顔を浮かべ、コーヒーカップをソーサーへ戻した。 「君がやろうとしてる事は私だけで無く、何の罪も無い人をも巻き込む事になる。 だからこそ・・・ 出来る事なら、君が考え直してくれないかと思って、君をここに呼んだのだ」 哀願にも近い、藤沢の言葉を聞いたナナは冷たい笑い声を上げた。
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