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二人が周囲を警戒しつつマングローブの林を進む中。
《ギャアァァァァーッ》
と、魂切る悲鳴が突如として林の中に谺した。
「!?」
視認出来る範囲では、周囲に敵の姿は無く、殺気も感じられ無ず、銃声が轟いた訳でも無い。
「敵の悲鳴?
戦闘による物とは思えないけど」
周囲を警戒する視線とMP5の銃口を連動させながら、麻里亜はリチャードを見る事無く尋ねる。
「解らんが。
敵のテリトリーに入ってる以上は、さっきの悲鳴は何かしら状況が動いたって事だな。
まずはそれを確認して、この状況を利用出来るなら使わない手は無い」
流石に歴然の兵士と思わせるリチャードの台詞であり、麻里亜は強く頷き、二人は悲鳴が発生したであろうポイントへと向かった。
程無く。
マングローブの林を抜けた先に、朽ちかける寸前といった木造の小屋が二人の視界に入って来た。
ここに辿り着く迄に、誰一人として敵と遭遇する事は無かったが、魂切る悲鳴は三回上がったものの、相変わらず銃声が響く事は無かった。
「ここが拠点の筈だが・・・
周囲に歩哨すら居ないとはな」
「ええ。
いくら残党勢力とは言え、素人では無い筈なのに・・・」
相変わらず建物周辺に敵の姿は見当たらない。
「悲鳴も気になる所だが。
まずは二手に別れて建物外周を策敵した後、建物内へ突入し状況を確認しつつ制圧する」
「了解・・・」
と麻里亜が最後まで言い終わらぬ内に。
《ギャアァァァァッ!》
と、五回目の悲鳴が響いた。
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