Ⅲ.rebellion《叛逆》

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生々しい感触が残る手を軽く擦りながら、麻里亜は夢の続きをぼんやりと思い返していく。 あの後。 一旦自分達の拠点に戻り、リチャードを病院へ連れて行った後。 スコップとC4爆薬を手に、麻里亜一人で敵の拠点へと戻った。 他に敵の増援が来る事も無く、武装勢力残党の討伐任務は完遂した訳であるが。 建物内の子供達が哀れで、建物内から子供達の死体を運び出し、土を掘り簡素な墓を作り、魂の消えた子供達を弔った。 子供達が例の東洋人に、如何なる理由で殺されたのかは解らなかったが、こうした事はあの国では珍しい事でも無いという事だった。 東洋人が一体何者なのか調べるべく、その死体を調べてみたが、ドッグタグ(認識票)や身分を示す物は何一つ発見出来なかったが。 東洋人の右肩に《Ⅰ》という刺青が彫られているのを目にした。 ファッションタトゥーとも思え無い、ただの数字としか思えない意匠のそれが何を意味するのかは、当時も今も全く解らない。 そして。 全てが謎のままに、アフリカ人の武装勢力残党の死体と共に、拠点ごとC4で爆破したのだった。 「あの頃の夢を見たのは・・・ 今日の出来事があったからかもね」 例の東洋人との戦闘と比べるべくもないが。 数時間前に遭遇したマリンサファイア号での事件が、過去の記憶を呼び覚ましたのかも知れないと結論付ける内に、再び睡魔が麻里亜を包み始めていた。 微睡みに解けて行く麻里亜は知らない・・・ 驚異的な能力を見せた《Ⅰ》の刺青の東洋人が。 マリンサファイア号の事件と関連し、オーロラを元に着々と計画を進めるナナと同じ、NGSLで処置を受けて驚異的な能力を得た事も。 NGSLから《輸出》され、シエラレオネに居た事も。 気付ける筈も無く、麻里亜は深い眠りへと落ちていった。
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