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生々しい感触が残る手を軽く擦りながら、麻里亜は夢の続きをぼんやりと思い返していく。
あの後。
一旦自分達の拠点に戻り、リチャードを病院へ連れて行った後。
スコップとC4爆薬を手に、麻里亜一人で敵の拠点へと戻った。
他に敵の増援が来る事も無く、武装勢力残党の討伐任務は完遂した訳であるが。
建物内の子供達が哀れで、建物内から子供達の死体を運び出し、土を掘り簡素な墓を作り、魂の消えた子供達を弔った。
子供達が例の東洋人に、如何なる理由で殺されたのかは解らなかったが、こうした事はあの国では珍しい事でも無いという事だった。
東洋人が一体何者なのか調べるべく、その死体を調べてみたが、ドッグタグ(認識票)や身分を示す物は何一つ発見出来なかったが。
東洋人の右肩に《Ⅰ》という刺青が彫られているのを目にした。
ファッションタトゥーとも思え無い、ただの数字としか思えない意匠のそれが何を意味するのかは、当時も今も全く解らない。
そして。
全てが謎のままに、アフリカ人の武装勢力残党の死体と共に、拠点ごとC4で爆破したのだった。
「あの頃の夢を見たのは・・・
今日の出来事があったからかもね」
例の東洋人との戦闘と比べるべくもないが。
数時間前に遭遇したマリンサファイア号での事件が、過去の記憶を呼び覚ましたのかも知れないと結論付ける内に、再び睡魔が麻里亜を包み始めていた。
微睡みに解けて行く麻里亜は知らない・・・
驚異的な能力を見せた《Ⅰ》の刺青の東洋人が。
マリンサファイア号の事件と関連し、オーロラを元に着々と計画を進めるナナと同じ、NGSLで処置を受けて驚異的な能力を得た事も。
NGSLから《輸出》され、シエラレオネに居た事も。
気付ける筈も無く、麻里亜は深い眠りへと落ちていった。
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