Ⅳ.damnation game《滅戯》

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【四時間後 新成テクノパーク】 平泉勝男は憂鬱な表情を浮かべ、自社・株式会社ヒライズミの会長室の椅子に座り、もう間も無くここを訪れる青井海男ことカゲトを待っていた。 浅見と出舞がその命を失う事となった、自分にとっては仇花の様な存在であるオーロラ。 今より六年前に、死んだ二人の会社と自分の会社で共同で開発し生まれた経緯がある。 元々は、オーロラという名称では無くJD1号という名称で、広域電波遮断装置として開発を進めていて、有効効果範囲内の通信を途絶させる事を主眼としていた。 いわゆるジャミング装置の一種であるが、より小型化し持ち運びも容易で、しかも効果は従来品を超えていた。 警察がガサ入れ突入前に使用すれば、中に居る者達が外部への通信が出来なくなるので、確保も容易となり突入時の危険も減少するだろうし。 また、当時アメリカが第二次イラク戦争へと突入したが。 その作戦下に於いても有用であると考えられたが。 警視庁も。 武器輸出ライセンスを持つ商社も。 JD1号の性能は認めながらも、それ以上の興味が示される事も無く、JD1号が世に出る事は無かった。 その結果を受けた平泉達は、JD1号の更なる性能向上を目指し改良を重ねた結果、当初の目的とはかけ離れた物が生まれた。 JD1号はジャミング装置であり、どちらかと言えば支援ツールという存在であるが。 新たに生まれた物は支援ツールといった副次的な存在では無く、EMP兵器に近かった。 それが、平泉の手元に置いてある大きめのスーツケース型の物体。 オーロラである。
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