Ⅳ.damnation game《滅戯》

3/23
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
結果的に兵器に近い存在となってしまったオーロラであるが。 今度は過剰な性能が仇となり、またしてもオーロラが採用されるには至ら無かった。 《究極の完成度を誇る失敗作》 そういうレッテルが貼られる事となったが、平泉自身もそう思っていた。 あくまで、自分の会社で製造する製品は民生品であり、直接的な軍事製品を製造している訳では無い。 ともすれば、閉鎖的である軍事企業との軋轢も生じかねないし、平泉自身も軍事製品の開発に乗り出す気も無く。 最早、民生品として使い道が無くなったオーロラは、自社の倉庫の片隅で永遠の眠りに就く定めであったが・・・ 今からここに来る、カゲトにその眠りを破られる事となったのだ。 「設計図込みで二億・・・ オーロラの正当な評価額という訳では無く、私の命の値段という訳か・・・ どちらにせよ安く値付けられたもんだ」 溜め息混じりに吐き捨てた平泉は、傍らのオーロラをじっと見つめた。 使い道の無いオーロラやその設計図を手放す事は惜しくは無い。 最初、自分や死んだ二人がカゲトの取り引きに強硬に反対したのは、提示された金額が一桁安かった事もあるが、どこの馬の骨か解らぬ輩にオーロラを渡せぬという気概があったからである。 だが。 その気概は二人が死んだ事により失せてしまった。 オーロラ開発とは別の、通常業務に於いての粉飾決算やリコール情報隠蔽などのヤバいネタを持つが故に、自分も命の危機にありながらも警察へ話す事が出来ずにいたのだ。 幸いにも死んだ二人の事で、警察が自分の元へ話を聞きに来る事は無いが、最初から素直にカゲトの提案に頷いていれば二人は死ぬ事も無かっただろう。 「しかし。 そこまでしてオーロラを手に入れたとして、彼は一体何をしようというのだ?」 平泉は相変わらずオーロラを見つめたまま沈思している中。 《コンコン》 と会長室のドアがノックされた。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!