Ⅳ.damnation game《滅戯》

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「会長。 青井様がお見えになりました」 「ああ。 お通ししてくれ」 平泉は椅子から立ち上がり会長室のドアを開け、カゲトを迎え入れた。 「君・・・来客用の飲み物は私が用意するので、そのつもりでいてくれ」 と平泉はカゲトを伴った社員へ告げると、社員は頷き元の仕事へと戻って行った。 「会長。お気遣い無く。 私はすぐここを去りますので」 カゲトは意味深な笑みを浮かべつつ、平泉が促すソファーへと腰を降ろしている。 「それは私としても嬉しい事だ」 余裕すら漂わすカゲトを小憎らしく思いつつ、平泉は件のオーロラと設計図をカゲトへと差し出す。 カゲトは無言で頷くと、スーツケース型のオーロラを開き中の確認を始めた。 「ちゃんと起動キーもありますし。 コンソールの動作も正常。 パスコードも初期設定のまま・・・ 完璧ですね」 オーロラが正常に起動出来る事を確認したカゲトは、オーロラの外蓋を閉じて平泉をじっと見つめた。 「変な小細工をしたら・・・ 私を殺すつもりだったんだろ?」 「さぁ? 私には何の事だか解りませんね・・・ ともあれ取り引きは成立という事で」 否定も肯定もしないカゲトであるが、それはまさに平泉の危惧通りと言う事である。 カゲトは懐から、通帳と印鑑とキャッシュカードを取り出し平泉へと差し出した。 「この通帳の中に指定の金額が入ってます。 あなたにとっては小切手や現金よりも、この通帳を自由に使われた方が都合が良いでしょうしね。 どうぞ中をご確認下さい」 カゲトに促されるまま通帳を確認すると、今日付けで二億の残高があり、口座名義は青井海男名義となっている。 「君の口座なのか?」 「お気になさらずに。 私の捨て口座みたいな物ですから。 今後は会長がご自由にお使い下さい」 そう告げたカゲトは、オーロラと設計図を手にソファーから立ち上がった。 「最後の確認だが・・・ この取り引きは極秘で頼むよ」 探る様な表情を浮かべる平泉へカゲトは苦笑を浮かべた。 「ご心配無く。 私が興味があるのはオーロラだけですからね」 ごくノンシャランに言い放ったカゲトは、平泉を振り返る事も無く会長室を後にした。 「若造がッ!」 平泉は怒りの形相でカゲトの背を睨み付けていた。
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