Ⅳ.damnation game《滅戯》

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【同時刻 麻理亜自宅】 「うーん・・・」 パソコンの画面を見つめながら麻理亜は、溜め息混じりに短く呻いていた。 画面の中には様々な仕事の求人の内容が記載されている。 通訳の仕事や貿易の仕事等、まずは自分に出来るであろう仕事から検索していくものの、今一しっくり来ないのである。 英語はそれで喋るのが当たり前な世界にいたし、フランス語も日常会話以上に話せもするが、それが本当に自分がやりたい事なのかどうかは疑問でもあった。 平時の平和な仕事。 傭兵という世界でしか生きた事の無い麻理亜は、その傭兵を辞めた後の、それとは真逆な世界の中で何をするべきかという事はまだ見えていないが。 いつまでも何もしないまま・・・という訳にも行かず、麻理亜は仕事を探しているのである。 雇ってくれる所があれば条件は二の次だし、一生懸命に働く気持ちも相当強いのだが・・・ 何をしたいか明確に解らなければお話にもならない。 「料理すらまともに作れ無いけど・・・ ケーキ屋さんで働くとか?」 ふと頭に浮かんだ、趣味と実益を兼ねた仕事を思い浮かべた麻理亜は再び苦笑を浮かべる。 自分がその世界に進む等と夢にも思う事は無かったが、そういう夢想が出来るという事は平和という事であり。 もし。 幼い時に実の両親が亡くならず。 その流れでイギリスへと渡り、そこでも身内を亡くしたテロと遭遇しなければ、自分はどういう人生を歩んでいたのだろう? と、漠然と考えながらケーキ屋の求人を眺める中、傍らの携帯に美月からのメールが届き麻理亜を現実へと引き戻した。 麻理亜はふっと笑みを浮かべ届いたメールに目を通す。
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