20人が本棚に入れています
本棚に追加
「まぁ。
アイツらガタイも良いし、これ位じゃ風邪引く事もないだろうよ」
カゲトは軽口を叩きながら、自分達の車を小森のベンツの前へ停めると、ベンツの後部座席のドアが開き小森が車外へと降りて来た。
「さてと。
雇い主様のご登場ってんなら。
アタシ達も降りなきゃね」
「ああ。行くとするか」
小森の姿を認めた二人は車を降りてトランクへと向かい、見方によっては、ただのスーツケースにも見えるオーロラを手に取り、トランクを開けっ放しで小森の元へ足を進める。
「遅かったな。
待ちくたびれたぞ」
二人の姿を見た小森の第一声にナナは嘲笑を浮かべる。
「アンタが張り切り過ぎてるだけじゃ無い?
それを聞いた小森の頬がぴくっと動いたが、小森は苦笑いでナナの言葉を受け流した。
だが。
「お前・・・口の利き方には気を付けろよ?」
ナナの態度に苛ついたボディーガードの一人が、ナナを鬼の様な形相で睨み付けた。
「お前は黙ってろ」
冷たく吐き捨てるカゲトの刺す様な視線に、ボディーガードの怒りは更に増した様で、その顔は寒さの中に居るにも関わらず真っ赤に紅潮していた。
「まぁ、くだらん言い争いは時間の無駄だし。
早速取り引きと行こうか?」
小森はパンと手を叩き話を進めようとするが、ナナがそれを遮った。
「取り引きの前に一つだけ聞きたい事がある」
手に持っていたオーロラを雪の積もる地面へ置き、ナナが告げた言葉に、小森やボディーガードの表情に緊張が走る。
「聞きたい事?
取り引き条件が不満なのか?」
「そんなんじゃ無いわ。
アンタにオーロラを渡せば一億って条件は破格だと思う」
「じゃあ他に何が聞きたいってんだ?」
「アンタがオーロラを何に使うのかを聞きたくてね」
苛ついた様に尋ねる小森へ、ナナは獰猛な笑みを浮かべながら答えた。
最初のコメントを投稿しよう!