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  「渡辺?」 急に黙ったあたしを心配するように、ちらりとあたしに視線を向ける部長。 あたしは何もなかったように、話し出す。 「で、どこ行くんですか?」 「…ちょっとしたパーティー。業務命令みたいなもんだけど」 「えっ?!…じゃあ、家寄ってもらっていいですか?着替えないと」 「却下。寄るとこあるから」 な…っ、今日のあたし、かなりラフですけど! とてもパーティーなんて行ける服じゃないですけど! 抗議の視線を部長に向けても、もちろん心の声は部長に届く筈もなく。 「降りろ」 車が止まったことにすら気づかなかったあたしは、助手席のドアを開けられて漸くそれに気付いた。 促されるように車から降りて、部長について入ったお店は、これまたあたしには縁のないような高級ブランド店。 「いらっしゃいませ、坂崎様」  
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