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「…ちゃんとお礼言いたかったです」
「伝えとく」
急いでいるのか、部長はすぐにあたしを連れて外へ出て、また車を走らせた。
せっかくキレイにしてもらえたのに、やっぱり気が重いのは、間違いなく部長のせい。
うぅっ、なんであたしこんなことになったんだろ。
イケメンとご飯なんて、やっぱりそんなにうまい話なんてないんだ!
社長代理のパーティーなんて、あたしいったいどうしたらいいんだよー!
「…俺のそばに、いればいいから」
「…あの」
「あんたは、何もしなくていいから」
まるであたしの心の声が聞こえたんじゃないかと錯覚するような、部長の言葉。
赤信号で止まったわずかな間に、ハンドルに凭れながら、さっきとは正反対の眼差しで…見つめられている…?
優しすぎる眼差し。
こんな部長、見たことないよ──。
完全に、不覚にも、イケメンに見とれてしまったあたし。
結局、後続車にクラクションを鳴らされるまで、部長は一言も発しなかったんだ。
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