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「…で?」
少しだけソファが揺れて、ネクタイを緩めながら、さらに部長が近づいてくる。
…って、近すぎだ!
ソファの隅に追いやられて、気付けば部長は、あたしに覆い被さるように迫ってくる勢い。
あたしはといえば、逃げることも、手で制することすら出来ずに、ただ部長を見ているだけ。
…イケメンがネクタイ緩める姿なんて、見とれて当たり前だし!
なんて自分の行動を後悔しても、なんとかのなんとかってやつで…。
「いつまで部長って、呼ぶつもり?」
「そっ…、だって、ぶちょ…!」
「まさか、知らないとか言うなよ」
ヒントはたくさんあったはず!
思い出して、あたし!
「…坂崎、さん」
「おい」
冗談だから怒らないで!
だって、そんないきなり無理だし。
だって──。
「──あきちゃん」
素直に名前が呼べない理由は、わからないけど。
「…なんちゃって…」
部長は一瞬真顔になって。
「…あんたになら、そう呼ばれるのも悪くないな」
今までで一番、嬉しそうに顔を綻ばせて笑ったんだ──。
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