新しい家族-side 萌香-

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あたしは下げていた頭をゆっくり元に戻すと、上目遣いに男の顔を見た。 グレーのスーツにストライプのシャツ。 爽やかな笑顔。 目尻には優しそうなシワが深く刻まれている。 ムカつくけど、母と並んで歩いても恥ずかしくない容姿だった。 「チッ」 露骨に舌打ちをした。 何も言わずに連れてきた母に腹が立つし、何より目の前で笑うこの男が嫌でたまらない。 男は顔色ひとつ変えずニコニコしたまま、今度はソファーに向かって手をあげた。 コツコツと革靴の足音が聞こえる。 まだ誰かいるの? あたしは身構えた。 目の前に立っていたのは、ストライプのスーツに薄ピンク色のシャツを着て、ネクタイを締めた若い男だった。 整形したような鼻や小さな顔。 黒目がちな大きな瞳。 優しく微笑むと歯並びの良い白い歯をのぞかせた。  「はじめまして。息子の高須瞬(たかすしゅん)です」 一瞬見惚れてしまったけど、あの男の息子だと思い直し、ふてくされたように答えた。 「矢吹萌香(やぶきもか)です」 「コーヒーみたいな名前だね」 そう言って彼は眩しいほどの笑顔を見せた。
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