新しい家族-side 萌香-

9/10
前へ
/120ページ
次へ
あたしの代わりに思っていたことを言ってくれた。 そうだよ、お母さん。 あたしは不安なの。 不安で不安で、たまらないの。 「なんて、生意気言ってすみません」 彼が小さく謝罪する。 「ううん。瞬くんの言う通り。萌香、ごめんなさいね。お母さん、あなたの気持ちも考えないで」 母の涙声と、隣の家族連れの楽しそうな声が絡み合う。 あたしだって本当はお父さんが欲しい。 みんな当たり前にいるのに、あたしには最初からいなかった。 顔も、声も、仕草も、何も知らない。 「ほら、今度は萌香ちゃんが素直になる番だよ。お母さん、謝ってるよね。萌香ちゃんも思っていること伝えなきゃ」 涙を拭って顔をあげると、柔らかく笑う彼がいた。 彼氏の、息子の、彼が。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加