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あたしの代わりに思っていたことを言ってくれた。
そうだよ、お母さん。
あたしは不安なの。
不安で不安で、たまらないの。
「なんて、生意気言ってすみません」
彼が小さく謝罪する。
「ううん。瞬くんの言う通り。萌香、ごめんなさいね。お母さん、あなたの気持ちも考えないで」
母の涙声と、隣の家族連れの楽しそうな声が絡み合う。
あたしだって本当はお父さんが欲しい。
みんな当たり前にいるのに、あたしには最初からいなかった。
顔も、声も、仕草も、何も知らない。
「ほら、今度は萌香ちゃんが素直になる番だよ。お母さん、謝ってるよね。萌香ちゃんも思っていること伝えなきゃ」
涙を拭って顔をあげると、柔らかく笑う彼がいた。
彼氏の、息子の、彼が。
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