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そうだ。
言わなきゃ、伝わらない。
思っていても、ちゃんと口に出して言わなきゃいけないんだ。
「あたし、お母さんの彼氏が嫌なわけじゃないの。だけど、お母さんが取られるような気がして不安なの。あたしから、お母さんを奪わないで」
ひとりにしないで。
震える唇を噛みしめると、涙がとめどなく溢れだした。
「ごめんね……」
あたしの肩を、母が抱く。温かい大きな優しさで包み込む。
「お母さん、萌香が一番だから。修二さんも大切だけど、萌香のほうが大切だよ。何があっても萌香のそばにいるから。だから心配しなくていいの」
「そうだよ、萌香ちゃん。おじさんは萌香ちゃんからお母さんを奪ったりしないから。不安にさせてごめんね」
わんわん泣き出したあたしに、少しだけおろおろしながら話し掛ける修二さん。
とっても優しい、お母さんの大切な人。
素敵な彼氏。
「萌香ちゃん偉かったね」
大きな手があたしのクセ毛を撫でる。
「ふわふわだ」と、彼は笑った。
胸につかえていた大きな黒い靄が、スッと晴れていく。
それはね、
やっぱり瞬くんのおかげだったんだ。
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