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「恵美さん綺麗だったな」
「うん。あたし感動しちゃった。2人とも幸せそうだったね」
「俺なんて思わず泣きそうになったよ」
「あたし微妙に泣いちゃったよ」
式が終わると修ちゃんと母を2人きりにするため、あたしと瞬くんはその足で近くの海へ向かった。
海の見える教会で式を挙げたいと言い出したのは母だ。
母にとっては初めての結婚式。
今日という日は母にとって、きっとずっと忘れられない日になったと思う。
白い砂浜を瞬くんと並んで歩く。
冬の風は冷たくて、ワンピースにストールを巻いただけの服装で来てしまったことを、早々後悔した。
「風邪ひくから」
瞬くんはスーツの上着をあたしの肩にかけ、ベスト姿で砂浜に座り込んだ。
「ありがとう」
心地よい香水の匂いとその優しさに、口元が緩む。
「海っていいよな」
「うん。あたしも海大好き。でも空も好き」
どこまでも広がる海の青と、全てを包む空の青。
交わることはないけれど、どちらの青も大好きだ。
肩にかけてくれたスーツに腕を通すと、ストールを瞬くんの首にクルクルと巻き付けた。
「スーツと交換だよ」
砂浜色のストールが、風になびいていた。
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