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ご対面の瞬間ぎついにきた。
父は俺の視線に気づいたようで、慌てたように手招きをした。
やべー。
緊張する。
近くなるにつれ、女の子の顔が見えてきた。
え?
中2?
嘘だろ。
胸まである長い髪は緩いパーマなのか柔らかなウェーブを描き、大きな茶色の瞳に血色の良い小さな唇。
透き通るような真っ白な肌に、ピンクのワンピースがよく似合っている。
俺は瞳を奪われた。
彼女は不機嫌そうに口を尖らせ、眉を下げる。
そんな姿ですら、可愛い。
おっと。
今は見惚れている場合じゃない。挨拶しなくては。
「はじめまして。高須瞬です」
声が裏返りそうになった。
「矢吹萌香です」
もか?
ああ。
彼女にピッタリな名前だ。
けれど初対面でそんなことは言えない。
とっさに俺は、こう言った。
「コーヒーみたいな名前だね」
萌香。
コーヒーを飲むたびに、俺は君を思い出してしまう。
そしていつも、胸が苦しくなるんだ。
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