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初めて会った君は、今にも泣き出してしまいそうな気持ちを必死に抑えていたね。
その胸にある寂しさが、俺にはわかったよ。
母親に本音をぶつけ声をあげて泣いた萌香は、数分後に笑っていた。
とびきりの笑顔を俺に向けて。
それから一年、俺と父さんは萌香の家によく遊びに行った。
一緒に夕飯を食べ、同じ時間を過ごす。
テレビを観て談笑したり、時々ゲームもやった。
最初の頃は俺や父さんの顔色を伺いながら話をしていた萌香だったが、少しずつ打ち解けるようになっていった。
そのうちに俺のことを“お兄ちゃん”と呼ぶようになった。
これは恵美さんが誰よりも喜んでいたかな。
“お兄ちゃん”なんて生まれてはじめて呼ばれた。
最初はむず痒いような、恥ずかしいような気もしたが、萌香の呼ぶ“お兄ちゃん”は、あっという間に馴染んだ。
同時に、俺には妹が出来たんだと実感させた。
妹
その響きはとても新鮮で、なおかつ妹になる子が萌香だったことに、俺は喜びを感じはじめていた。
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