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小さな教会でささやかな結婚式を挙げた。
幸せそうな父の顔を見ると、俺は大きな安堵に包まれた。
父さんはやっと自分の幸せを見つけることができたんだと思うと、一瞬涙腺が弛みそうになった。
さすがに泣きはしなかったが、心の中に温かい気持ちが溢れた。
「2人きりにしてあげよう」と言い出したのは萌香だ。
俺もその意見に賛成した。
心のどこかに、萌香と2人になりたいと思う気持ちもあった。
最近の俺はどうもおかしい。
寝ても覚めても萌香のことばかり考えている。
妹が出来たことに、浮かれているのか。
いや、それだけではないことくらい、俺自身本当は気づいている。
今こうして並んで砂浜を歩いていると、手を伸ばしてしまいそうになる。
色素の薄い滑らかな肌に。
その、栗色の柔らかな髪に。
触れてはいけない。
だって、彼女は俺の“妹”になる女の子なのだから。
やっと掴んだ父親の幸せを、息子の俺が壊してどうするんだ。
もしかしたら智のロリコンが移ったのかもしれないな。
そうに決まっている。
これは一過性のときめきであって“恋”なんかじゃないと、誰よりも俺が望んでいた。
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