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歩きだすとサクサクと砂浜が鳴く。
潮の香りと隣を歩く萌香のシャンプーの香りが、鼻をくすぐる。
ワンピースにストール姿の萌香は、身を縮ませながらぶるぶると体を震わせた。
「風邪ひくから」
俺は上着を脱いで彼女の肩にかけた。
やばい。
ワイシャツに一応ベストも着ているけど、冗談抜きで寒い。
萌香はもっと寒かっただろうな。
もっと早くに上着を渡せば良かったと後悔した。
「ありがとう」
上目遣いに俺を見つめ、可愛い笑顔を見せる。
マジやめて。
ドキドキするから。
罪悪感。
誰に対する罪悪感?
父さん?恵美さん?
俺が砂浜に座りこんだのは、寒かっただけじゃない。
真横にいる萌香を見つめていられなかったから。
海を見て気持ちを落ち着かせたかった。
こんな気持ちおかしいだろ?
今日は父親の結婚式だ。
それなのに俺はこれから妹になる女の子に、ドキドキしている。
5歳も下の中学生の女の子に、ハタチを越えた俺が恋するなんてありえない……というか、認めたくない。
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