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萌香はしゃがみこみ、何やら真剣に砂を掘り出した。
一体何がしたいの?
「汚れるよ」
白い砂が山になる。
萌香からはこんな答えが返ってきた。
「お城を作るの」
城?
俺も幼い頃に作った記憶がある。
何度も何度も砂を盛り、水で固めて大きな城を完成させた。
「小さい頃、お母さんと一緒によく海に行ったの。それでね、毎回必ず砂でお城を作ったんだ」
ああ、そうか。
砂の城は母親との思い出なんだな。
きっと今、母親との大切な記憶を思い出しているんだろう。
俺にだってある。
母さんと一緒に海に来たこと。
水際に砂で城を作った。
だけどそれは……。
それは。
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