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「萌香……?」
砂を見つめた大きな瞳から大量に溢れだしたそれは、萌香の頬を濡らし、作り途中の城に模様をつけた。
不安を隠してここまで来た彼女を、俺は心の底から愛しいと思った。
泣かないで。
約束するよ。
君の母さんは、新しい家族は、俺が必ず守るから。
誰よりも近くで、君の幸せを守り抜くから。
だから、その役目を俺にやらせてくれないか?
「大丈夫。何も不安はいらないよ。新しい家族は、萌香は、俺が必ず守るから」
萌香の背中に手を回した。
小さな肩があまりにも震えているから、
壊れてしまいそうで、崩れてしまいそうで、
怖くてたまらなくなったんだ。
君を守ると誓ったあの日。
同時に俺は生涯君の“兄”でいると心に決めた。
それなのに。
母さんと作った砂の城は、あっという間に波に連れ去られてしまった。
萌香。
俺は君の幸せも、波にのませてしまったのかな。
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