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「…で?…我が領土に断りもなく侵入し、雷(いかづち)のような攻撃を放った…ふむ…ダルガバス…聞かぬ名だな?」
「森泉国の宰相…だった男です」
「…だった?…とは?」
「密偵部隊からの報告によると、1周刻(にち)ほど前…ファーマス王子が王権を取り戻し、宰相だったダルガバスは第2象限外苑荒野方面へと逃亡。その後の動向は不明でしたが…」
「そうか。確かにデルタ村のある短軸正域境界の最縁部は…第2象限の外苑荒野に接しているが…ダルガバスとやらが突然、森泉国の王権を奪取した背景には…その巨大な飛空艦船を隠し持つことから来る自己の力の過大評価があった…というわけだ…」
私は、必要な確認を終えると、ゆったりとした椅子の上で肩肘をついて黙り込んだ。我が銀雪の氷原国の王城。その私の執務室。私の目の前には、銀色の鏡のような平面が宙に浮かんでいる。
その鏡面に見えた盤面に映るのは…正面に座る私の顔…ではなく、今、デルタ村の上部空間に突如として現れた巨大な飛空艦船だ。村を焼く炎に船底を赤く照らされた不気味な威容は、村から離れたどこかの高台から遠望する構図の映像。
音声は無く、映像を送っている内国諜報部の従者から送られてくる因子通信の内容を、私の侍従が口伝により私に伝える仕組みとなっている。私の目の前の厚みが全くない銀の板は、その情報を口伝する役目の侍従がその因子の能力で生み出しているのだ。
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