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私は、いつもそうするように目を閉じ、右手の中指で自らの眉間をトントンと叩く。
時折、眉間を叩くのをやめては目を開き、しかし、すぐまた目を閉じて眉間をトントンと叩く。得られた情報を考えるときの私の癖だ。それを何度も繰り返し…漸(ようや)く、目を開くと鏡盤を生み出しているメイド風の侍従に顔を向け…問う。
「…何故、ダルガバスは…あのような奥の手を隠し持っておきながら…森泉国内においてその力を行使せず…ファーマスに追われたのであろうな?…国を追われたというのが狂言で、森泉国の先兵として我が領土を奪取しに来たのであれば…あのような戯れ言は言わぬであろうし…?」
第8番目の国。マッドガルデンの建国。そのような笑えない冗談を、あのファーマスがワザワザこのように手の込んだ演出で披露するとは思えない。
私の言葉は疑問形であったが、周りに控える侍従や従者たちは誰一人として答えを返そうとはしない。疑問の形であっても、私が彼らの答えを期待していないことを理解しているからだ。私の問いに答えるのは、他ならぬ私自身。
「つまり、あの飛空艦船は、1昨周刻(きのう)の段階では使えなかった…というワケか?…そして…その力を行使する対象として…自分を追った森泉国の領土ではなく…我が国の領土に牙を剥いたのは………森泉国に対して弱みがある?…それとも…」
決して多いとは言えない情報を、自らの頭の中で様々な可能性を検証しながら最も不自然さのない形へと組み替え、極めて真実に近い答えを導き出していく。
知略の王の呼び名に恥じぬよう、私は沈思黙考する。転機を好機へ変えるため…。
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