第1章 混迷の基盤世界

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 「あははは。まぁまぁまぁまぁ…。そう慌てて答えを出さなくてもいいよ。僕の予想では、アレはまだ本来の力を十分には発揮できないハズさ…考える時間は十分にあると思うよ。だから…まずはゆったりと高みの見物と行こうじゃないか!」  「何故、そう予想するのだ?」  「アレが本調子なら、もっと早く歴史に登場して状況を塗り替えてるよ。アイツはね、きっと目覚めたばかり…寝ぼけてて…そして空腹状態なんだと思うな」  いつもファーマスをからかう時と同じように、僕は自信満々にそう断言する。  組織の中でも最も情報収集と分析力に優れた僕の言うことに、他のメンバーも反論することはできないんだ。そもそも、彼らが囲む楕円形の机の上に浮かんだ立体的な映像も、僕の特殊能力によって映し出されているものだからね。映像が立体的であるってことは、複数の目によって得られた情報を違和感なく統合しているということに他ならない。  僕には、それを可能とする複数の「目」が存在し、その「目」たちから送られてくる因子通信の情報には音声以外の膨大な情報量が流れていることを意味してるんだ。  「それにね、老師。あの偉そうに鼻の穴を広げているダルガバスっていう男だけど…無能ではないんだけど…世間知らずでね。森泉国で内乱を起こすまでは、森泉国内の行政運営だけにしか関わってないんで、各国の軍備情報や能力者(パーランシャル)の保有状況、それから詳しい国際情勢…とか、ほとんど理解していないんだよ」  理解できていれば氷原国になど侵攻しないだろう。そう説明してやると黒服の一堂は皆、納得の表情を浮かべる。組織としては当面待機…という結論がまとめられた。 ・・・ ・・・ ・・・
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