第1章 混迷の基盤世界

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 たった数日の間に、状況は驚くほどダイナミックに遷移している。  「…もはや静観していられる状況では無くなってきたな。前回、『調停』を行ったのはいつだったかな?…氷原国中立大平原での大規模な爆発は単発的で、しかも火力によるものではなかったようだが………このデルタ村の上空に現れた艦艇は…明らかに現在の仕様上許されているモノではないそ…」  「では、介入し制圧するということで…よろしいですね?」  「うむ。そのつもりで準備にかかるのだ。…だが、儂の許可があるまでは待機を維持せよ。…氷原国の国軍の出方を見極めてから、より効果的な出方をしようではないか」  「なるほど…。管理委員会の力を見せつけてやるというわけですな」  「そうだ。そうそう我々が『調停』を行わなければならぬような介入をさせられては堪らぬからな。その身の程をわきまえさせるには………圧倒的な力をより効果的なタイミングで見せつけてやらねばなるまいよ?」  「誰に…見せつけるのでしょうね」  「…ひ、人聞きの悪いことを申すな。儂は、他意など持っておらんぞ」  部下の中では最も優秀な男だが、この男も儂のことを心から尊敬していないような気がしてならない。だが、そんなことは今はどうでもよいのだ。  儂の使命は、この基盤世界側の秩序と環境を維持することなのだから。  あの方に、私が有能であることを示す良い機会だ………などと…考えていないと言えば嘘になるが、それをワザワザ公言する必要もない。  「忙しく…なってきわい…」 ・・・ ・・・ ・・・
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