第二話『廃病院』

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友人の大倉(仮名)はアクティブで友達も多い。 彼もまた、肝試しとして何度かその病院に行ったことがあったが、奇妙な体験をしたことは一度もなかった。 したがって彼にとってその病院は、いかにも何かが『出そう』なだけで何も出ない、勝手に噂話が独り歩きしている“インチキ心霊スポット”だったのである。 ある日、ちょうど友人とその病院の話で盛り上がっていたところ、まだそこに行ったことのない友人Aが会話に交じり『俺もぜひその病院に行ってみたい』と言い出したらしい。 大倉は却下した。 市街地からそのM山の麓まで車で30分以上、かつ、そこから山頂までさらに30分はかかる。 わざわざ“インチキ心霊スポット”に行くための労力として考えると、それはあまりに面倒臭い道程だったからだ。 それでも好奇心旺盛な友人Aはどうしても行ってみたいと言って聞かない。 渋々、大倉は時間の都合の合う友人たちに声をかけ、友人Aと自分を含め、男三人、女一人の四人組でその病院を目指すことになった。
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