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「なぁ…、やっぱり帰ろうぜ?」
友人Aの突然のその一言は、大倉たちを大いに困惑させた。
そもそも、わざわざここまで来たのは友人Aの一言が発端だ。
その言い出しっぺたるAがろくに探索もせずやっぱり帰ろうなど、付き合わされた大倉たちからしてみれば「はぁ!?」という感じである。
それでも、何しろ狭い階段。Aが下りようとすれば、全員が階段を下りざるを得ない。
結局、Aに押し切られる形で階段を下りた全員は、Aに背中を押されるがままに病院を出て車に戻った。
せっかくここまで来たのに、と口を尖らせる大倉たちの不満の声にも耳を貸さず、エンジンをかけ車を性急に走らせ始めたA。
普段は温厚な大倉も、さすがにこの時ばかりは友人Aに食ってかかった。
「おい、なんでもう帰るんだよ。自分勝手にも程があるだろ」
「無理。あれ以上は無理。いや、だってな…?」
ほんの数分前まで意気揚々としていた友人Aは、青ざめた顔で、助手席に座る大倉にこう言った。
「階段の、一番上にな?小さな女の子が座ってて、こっちを見下ろしてたんだよ」、と。
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